270.[Cool Side] ベルトのトリックと四元数
幅のある細長いベルトを用意し、表は白、裏は黒に色分けされているとする。ベルトの端には、表裏の区別のできるカードをつりさげておき、カードの表は白、裏は黒とする。
まず、カードを左向きに360度回転して、次の図のbの状況を考える。これから出発して、cのように、ベルトを動かしてカードの下をくぐらせる。結果として、dの状況が得られる。これも、やはり、360度ひねられたベルトであるが、ねじれの向きが反対になっていることに注意しよう。はじめのベルトが、左向きにねじれていたのに対し、今度のベルトは、右向きにねじれている。このことは、カードの下をくぐらせる操作で、720度変わったことを意味する。
ベルトがカードの下をくぐる1回の操作で、ねじれが720度変わったということは、次の図のように、2回ねじったねじったベルトから出発して、カードの下をくぐらせると、ねじれのないまっすぐなベルトが得られることを意味している。
さて、3次元空間の座標軸、x軸、y軸、z軸を回転軸として反時計回りに180度回す回転運動を考え、これらをそれぞれI, J, Kとおく。この3種類によって決まる四元数を求めてみると、偏角は90度で、それぞれi, j, kとなる。180度のかわりに540度を考えても回転移動としては同じである。ところが、540度を代入して計算してみると、偏角は270度で、それぞれ-i, -j, -kとなって符号が反対になってしまう。これがメビウスの帯に見られるような二価性の現象である。回転に対する四元数を求めるためには、その回転を変換として見るだけでなく、回転角0度から出発して、どのような経路をへてその変換に至ったのかという情報までこめて考えなければならない。それがSO(3)の道を指定するということである。
四元数i, j, kについてx,軸、y軸、z軸を回転軸とする球の内側にあるベルトつきの球の180度回転を考えて、次の図のようなベルトによる表示が得られる。
同じようにして、360度回転、720度回転を次の図のようにベルトつきで図示してみよう。対応する四元数は、それぞれ-1,1となる。720度回転が1に対応することは、先に説明したベルトのトリックと次のように関係している。2回ひねりに対応するベルトは、ベルトをひっぱって内側の球の下をくぐらせることにより、ねじれのないまっすぐなベルトに変形できる。このことは、720度回転のベルトが本質的に0度回転のベルトと同じであることを意味している。一方、-1に対応する360度回転のベルトについては、このような変形が不可能であることは、先のベルトのトリックで説明したとおりである。これは左回転でも右回転でも同じであることに注意しよう。
回転I,J,Kを変換とみると、関係式
が成立している。ここで積は回転の合成を示す。たとえば、IJはまずy軸中心に180度回転してからx軸中心に180度回転することを表している。またeは恒等変換を示す。この場合には、e,I,J,Kの4つで群となり、「クラインの四元群」とよばれている。
これをベルトつきで考えてみよう。まず、上の図のi,j,kの図のz軸を回転軸とする180度の回転を2回合成すると、上の図の-1の図のような360度回転のベルトが得られる。これが-1に対応することは、四元数の演算規則
を説明している。回転軸をx軸,y軸にとると、次の図のように
が説明される。いずれも、360度の回転のベルトが-1に対応することを用いている。
四元数の演算規則をこのような方法で図示したものが次の図である。それぞれ、
に対応している。図の読み方に関して、説明しておこう。四元数の積について、対応する回転移動は、右側の方から順に行なっていくとしている。たとえば、一番上の図では、まずjの回転を施してから、iの回転を行なっている。結果として得られるベルトは、左回りの540度回転で、ベルトのトリックによって、これは右回りの180度回転つまりkを表すベルトと同じである。
【参考文献】
・河野俊丈『アウト・オブ・コース4 組ひもの数理』(遊星社)



















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